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医療保険サービス

訪問リハビリ

訪問リハビリとはどんなサービス?

訪問リハビリは、主に要支援・要介護者の方を対象としたサービスで、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士が施術を担当します。病気やケガで障害を負った人の「日常生活の自立を助ける」ことを目的としています。リハビリによる運動機能の改善や筋力アップにより、日常生活をより質の高いものへと導くこと(=QOLの向上*)も目的の1つです。

*QOL…Quality Of Lifeの略。「生活の質」のことを意味する

 

本来こうしたリハビリは病院やクリニック・介護施設などで受けるものですが、ご自宅に居ながら受けることができる点が訪問リハビリのメリットでしょう。

 

似たサービスとして、「訪問マッサージ」が浮かぶ方もいらっしゃるでしょう。

理学療法士や作業療法士・言語聴覚士によって提供される訪問リハビリとは異なり、訪問マッサージでは「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を持つ人がマッサージ治療を提供してくれます。

日常生活の自立を促すことを目的とする訪問リハビリとの違いは、通院が困難な患者さんに対して関節の動きや疼痛を改善したり、しびれやコリ・むくみなどの解消を目的として行われるのが訪問マッサージです。

厚生労働省によると、訪問リハビリの平成31年の受給者数は11.5万人にも上り、年々右肩上がりで増加していることが読み取れます。

また、訪問リハビリが必要になった原因としては、脳卒中(31.4%)が最も多く、次いで骨折(26.6%)があります。そのほか多いものとしては、廃用症候群(18.4%)、関節症・骨粗しょう症(15.5%)、高血圧(12.6%)などが挙げられます。

出典・参考:厚生労働省
「介護給付費等実態統計(旧:調査)」(各年4月審査分)
訪問リハビリテーション「訪問リハビリテーションが必要となった原因の傷病」(P.16)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000679685.pdf

 

 

訪問リハビリのサービス内容

訪問リハビリではご利用者さんの状態に合わせて、理学療法士や作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門員がご自宅へ訪問し、主治医の指示に合わせてリハビリを行います。病気やケガ、老化などによって衰えてしまった身体機能を回復・維持するためのトレーニングはもちろんのこと、歩行や食事、トイレなど日常生活の動作の訓練や改善のための取り組みまで行います。

 

それぞれの専門職は以下のような役割を担っています。

  • 理学療法士
    基本的には理学療法士が中心となって訪問リハビリを提供します。家の中でできる筋力トレーニングの実施、日常生活に必要な歩行・食事などの動作訓練を実施します。
  • 作業療法士
    作業療法士も理学療法士のような日常生活の動作訓練などを実施しますが、レクリエーションなどを通して、利用者さんが楽しみながら身体機能の回復・維持を目指す手伝いをします。リハビリでは体の機能維持のみならず精神的なケアも大切なので、認知症の人、リハビリに対する意欲が低い人へのアプローチに向いています。
  • 言語聴覚士
    病気の影響で言葉がうまく発せられなくなってしまった人に向けて、嚥下機能の改善を行ったり、気持ちを言語化する訓練を手伝ったりします。コミュニケーションが取れなくなるのは精神的にも非常にストレスになります。言語にまつわる専門知識を持った言語聴覚士からのリハビリも必要不可欠と言えます。

 

具体的なサービス内容としては、以下のようなものがあります。

 

  1. 健康管理
    血圧や脈拍・体温測定、食事や排せつなどの健康状態の確認・管理など
  2. 身体機能回復・維持を目指した訓練
    筋力トレーニング、関節を柔らかくするための関節可動域訓練など
  3. 日常生活における動作訓練
    歩行や寝返り、起きる・立つ・座るといった基本動作、食事、排泄(トイレ)、着替え、発声などの訓練
  4. マッサージ
    福祉用具の選定
    適切な福祉用具の提案と、活用方法などのアドバイス
  5. その他
    住宅改修に関するアドバイス、ご家族の介助方法にまつわる指導・アドバイスなど

 

訪問リハビリの利用条件・対象者

訪問リハビリを利用できる回数や時間は、ケアマネジャーが作るケアプランで決まりますが、基本的には「1回20分・週6回まで」が限度とされています。40分や60分の利用も可能で、その場合それぞれ週3回/週2回までとなります。

 

訪問リハビリの対象となる人は、下記2つの条件を満たした方です。

  1. 介護保険証の認定を受けている
    つまり、要介護1以上の方が対象です。(病気やケガの種類や原因は不問)要介護認定で介護が必要だと認められると、訪問リハビリを含めた介護保険サービスが受けられるようになります。
    ※要支援(1~2)の方は介護予防訪問リハビリテーションの対象となります。
    ※40~64歳の方の場合は、特定疾病(がんや関節リウマチなどの16種類)が原因で要介護認定を受けた場合に限ります。要介護認定を受けていないけれど訪問リハビリを利用したい人は、介護保険ではなく医療保険を利用して訪問リハビリを利用することができます。
  2. 主治医から「訪問リハビリが必要」と認められている
    主治医から訪問リハビリが必要と判断されない限り、訪問リハビリのサービスを利用することはできません。また、訪問リハビリを継続して利用するには「3カ月に1回」指示書を発行してもらう必要があります。
    ※医療保険で利用している人は1カ月に1回指示書の発行が必要

また、介護施設に入居されている人(短期入所生活介護(ショートステイ)でも同様)は基本的に訪問リハビリを利用できません。これは例外もありますが、基本的には医療保険を用いた訪問リハビリでも同じです。理由は単純で、介護施設においてリハビリも提供しているからですね。

 

具体的には、以下のような症状があるときは訪問リハビリの利用を検討・主治医へ相談してみるのがおすすめです。

  • リハビリを受けたいけれど、寝たきりのため通所するのが難しい
  • リハビリを受けたいけれど、認知症などによりご本人がデイケアに行くことを嫌がる
  • 身体介助の方法を指導してほしい
  • 筋力が低下して歩きにくくなった
  • 食べ物を飲み込むのが難しくなった
  • 言葉をはっきりと発せられなくなった
  • 体の一部に麻痺や拘縮の症状が見られる
  • 体が思うように動かなくなってきた
  • 福祉用具の使い方がわからない
  • 事故や病気・老化による影響で日常生活に不安がある

 

訪問リハビリの費用

訪問リハビリは、その利用回数に制限があることは前述の通りです。基本的に1回のリハビリは20分単位で、1週間に6回までの利用が可能です。1回40分のリハビリを行った場合には、利用回数は週3回までとなります。

訪問リハビリの費用は、サービスを受ける時間やお住いの地域によっても多少異なりますが、1回20分の場合、基本サービス費の自己負担額(1割)はおおよそ300円程度です。

この基本サービス費のほか、利用者の状態に応じたサービス提供や事業所の体制に対して加算や減算が行われます。

 

<主な加算の例>

  • サービス提供体制強化加算ⅠもしくはⅡ(それぞれ6単位もしくは3単位/1回)
    勤務年数が7年以上もしくは3年以上のスタッフが配置されている場合
  • リハビリテーションマネジメント加算(180~483単位/1カ月)
    リハビリの継続的な管理に対する加算。※事業所の体制によって単位は異なる
  • 訪問リハビリテーション移行支援加算(17単位/1日)
    リハビリによって身体機能が回復し、家庭での家事や地域行事への参加、指定通所介護への移行ができた場合
  • 短期集中リハビリテーション実施加算:200単位/日
    利用者の身体機能を回復するための集中的なリハビリテーションを実施していることを評価する加算
  • 事業所評価加算:120単位/月
    一定期間内において、利用者に対して効果的なサービスの提供を行った事業所を評価する加算。 要支援の状態が一定以上「維持または向上」されている場合に算定できる

 

<主な減算の例>

  • 同一建物減算1:10%OFF
    事業所と同一建物の利用者又はこれ以外の同一建物の利用者「20人以上」にサービスを行う場合
  • 同一建物減算2:15%OFF
    事業所と同一建物の利用者又はこれ以外の同一建物の利用者「50人以上」にサービスを行う場合
  • 訪問リハ計画診療未実施減算:-50単位/回

事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合

 

なお、訪問リハビリには介護保険以外に医療保険が適用されるケースもあります。そのため、適用される保険によっても費用は若干変わってきます。ただし、医療保険と介護保険の併用はできないため、要介護認定を受けている人は介護保険での利用が優先です。(時間や回数の制限は介護保険/医療保険どちらでも同じです)

 

訪問リハビリ利用時の具体的な費用の例

それでは訪問リハビリを利用した際の具体的な利用料金を見ていきましょう。

地域別に3つの施設を例にとっていますが、費用が大きく変わることはありません。

 

<千葉県船橋市の場合>

訪問リハビリテーション費(307単位)

料金名 提供時間 1割負担額 2割負担額 3割負担額
基本料金

(介護予防を含む)

20分あたり 327円 655円 982円
40分あたり 655円 1,310円 1,964円
60分あたり 982円 1,964円 2,946円
短期集中リハビリテーション加算 (200単位)(介護予防を含む) 1日あたり 214円 427円 640円

 

<東京都北区の場合>

訪問リハビリテーション費 

料金名 提供時間 介護保険利用の場合 医療保険利用の場合
基本料金 20分あたり 327円(1割負担額) 300円(1割負担額)
その他費用 1回あたり 1.サービス連携体制強化加算:6円

2.短期集中リハビリテーション実施加算

-退院(退所)~1ヶ月:340円

-1ヶ月~3ヶ月:200円

 

<栃木県矢板市の場合>

訪問リハビリテーション費 

料金名 提供時間 介護保険利用の場合 医療保険利用の場合
基本料金 20分あたり 307円(1割負担額) 300円(1割負担額)
サービス提供体制強化加算 1回あたり 60円
短期集中

リハビリテーション

実施加算

(要介護1~5) 

1回あたり 退院・退所日または

認定日より1月以内:340円

 退院・退所日または

認定日より1月超3月以内:200円

訪問リハビリで使える保険

似たサービスとしてご紹介した訪問マッサージでは原則として医療保険のみが適用される一方で、訪問リハビリの場合は医療保険と介護保険のどちらかが適用されます。ただし、医療保険と介護保険の併用はできないため、要介護認定を受けている人は介護保険での利用が優先です。(時間や回数の制限は介護保険/医療保険どちらでも同じです)
したがって、65歳未満の方や、65歳以上であってもまだ要介護認定を受けていない方は医療保険が適用となります。

 

介護保険を利用して訪問リハビリを受ける場合と、医療保険を利用して受ける場合とでは、利用できるサービスの「幅」に違いがあります。

基本サービス費用としてはどちらも300円程度です。介護保険の場合には「訪問リハビリの費用」の項でも触れたとおり、事業所の体制やそのサービス内容に応じた介護報酬の加算があります。例えば、勤務年数が7年以上の担当者が配置されると「サービス提供体制強化加算(Ⅰ)」が加わるため、1回で6単位の加算となります。他にも短期集中リハビリテーション加算(200単位/日)、事業所評価加算(120単位/月)、訪問リハビリテーション移行支援加算(17単位/日)などがあります。これらの加算が、基本料金である307単位にプラスされていく仕組みです。
一方で、医療保険の場合はどうでしょう。医療保険を適用する場合には、サービス提供体制強化加算(1回6単位)と短期集中リハビリテーション加算(1日200円)のみの加算となります。したがって、介護保険での利用に比べて受けられる加算(=サービス)が減ってしまうことになります。

 

訪問リハビリサービスの利用手順

では、いざ実際に訪問リハビリを利用したいと思ったら、どうすれば良いのでしょうか。必ずしもこの限りではありませんが、以下に一般的な流れを載せましたので参考にしてみてください。

  1. 主治医への相談と診察
    訪問リハビリを利用するためには、主治医による「リハビリ指示書」が必要です。主治医に「訪問リハビリを利用したい」という旨を伝えて、診察を受けましょう。主治医が訪問リハビリの利用が適切かどうか判断します。
  2. リハビリ医師による診察とリハビリ計画の作成
    主治医から訪問リハビリの利用認可がおりると、診療情報提供書と指示書を発行してくれます。これらが今度は病院のリハビリテーション科や訪問リハビリ事業所に在籍しているリハビリ医師へ提供され、次はリハビリ医師による診察を受けることになります。主治医による情報とリハビリ医師による診察結果を元に、リハビリ計画書が作成されます。
  3. 訪問リハビリ事業所への計画書の共有・カウンセリング
    リハビリ計画書が作成されたら、続いては利用する訪問リハビリ事業所へ計画書が伝達され、その計画書に基づき訪問リハビリを実施します。なお、リハビリが実施される前にはカウンセリングがあり、担当者が利用者とご家族へリハビリ内容の説明をしてくれます。
    また、ケアマネジャーは訪問リハビリをケアプランの中に組み入れてくれます。これにより、保険適用でサービスが利用できるので安心です。
  4. 訪問リハビリ開始
    理学療法士や作業療法士・言語聴覚士などが決めた日時にご自宅へ訪問します。健康チェックなどを行ったうえで、計画書に基づき訪問リハビリを開始します。