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医療保険サービス

訪問介護

訪問介護とはどんなサービス?

訪問介護は、ご利用者(要介護者)が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、訪問介護員(介護福祉士やホームヘルパー)が利用者の居宅を訪問し、サポートしてくれるサービスです。食事・排泄・入浴などの介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援をしてくれます。なおここでいう「居宅」には、自宅の他有料老人ホームなど介護施設の居室も含まれます。

通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービスまで提供してくれる事業所もあります。

以下は厚生労働省より発表されている、訪問介護の利用者数の推移です(介護予防訪問介護を除く)。これを見ると、「生活援助中心型」「身体介護中心型+生活援助加算」「身体介護中心型」のすべてで利用者数が毎年増加していることは一目瞭然です。

超高齢化社会を迎えた日本では介護施設などの入居施設も満床が続き、自宅での介護生活を余儀なくされている人も増えてきています。訪問介護の需要は、今後益々大きくなると言えるでしょう。最期のその時まで、住み慣れた我が家での生活を望む声も高まっています。訪問介護サービスをうまく利用することで、その願いを叶えることができるでしょう。

引用:厚生労働省「訪問介護の内容類型別受給者数の推移(介護予防訪問介護を除く)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000183149.pdf

 

訪問介護のサービス内容

それでは、訪問介護で利用できる具体的なサービス内容を見ていきましょう。
訪問介護で受けられるサービス内容は、大きく分けて「身体介護サービス」と「生活援助サービス」の2種類があります。

身体介護とは、「身体に直接触れて行う介護」のことを指します。

<身体介護サービスの具体例>

  • 食事介助:食事の際の支援
  • 入浴介助:顔、髪、腕、足など部分的な洗浄または全身浴
  • 清拭:入浴ができない場合に、体を拭いて清潔にする
  • 排泄介助:トイレの介助・おむつ交換など
  • 歩行介助:自分の足で歩くことができるように介助を行う
  • 更衣介助:着替えの介助
  • 体位変換:床ずれなどを予防するため、寝ている時の姿勢を変える
  • 移乗介助:ベッドから車いすに移動する際の介助
  • たんの吸引*(研修を修了し認定を受けた訪問介護員のみ実施可能)など

一方の生活援助サービスは、「生活するために必要な家事全般の支援」を行うサービスです。

 

<生活援助サービスの具体例>

  • 掃除:利用者の居室・トイレなど利用者が使用する部分の掃除、ゴミ出しなど
  • 洗濯:利用者が使用した衣類の洗濯や整理など
  • 食事準備:食材の買い出しから調理〜片づけまで
  • その他:薬の受け取り、爪切り、血圧測定、耳垢の除去など医療行為に当たらないもの

 

その他、「通院時の乗車・降車等介助(いわゆる介護タクシー)」や、「通院介助」「外出介助」などがあります。これらは介護保険が適用となる場合、ならない場合が厳しく定められているため、そもそもヘルパーさんに行ってもらえる場合とそうでない場合があるので要注意です。

根幹の考え方としては、「訪問介護員の介助が必要な場合にのみ、介護保険を適用してのサービス利用が可能」です。したがって、たとえば病院内で院内スタッフが対応してくれるのであればそれは介助が必要とは言えません。また、仮に院内であってもトイレの際に介助が必要な状況で、それをヘルパーが行うのであればもちろん対象となります。

 

訪問介護の対象範囲外となるサービス

訪問介護は「利用者が日常生活を送るために必要不可欠なサポートを提供する」ことが基本です。そのため訪問介護では、次のようなサービスを受けることはできません。

 

<日常生活の援助の範囲を超えるサービス>

  • 家具の移動や電気器具の修理
  • 年末などの大掃除の手伝い
  • 窓のガラス拭き
  • 各行事の準備
  • 家具の修理
  • 庭の草むしり
  • ペットの世話

 

<医療行為にあたるもの>

  • インスリンの注射
  • 経管栄養
  • 点滴、採血
  • 摘便や床ずれの処置など

 

<利用者以外への援助>

  • 利用者の家族のための家事全般、子守り、来客の対応

 

訪問介護の利用条件・対象者

訪問介護は、前提として「利用者本人だけ」を対象としたサービスです。介護保険により訪問介護を受けることができるのは、要介護1~5の認定を受けた方です。

また、要支援1もしくは要支援2の認定を受けている方は「介護予防訪問介護」のサービスを利用できます。ただし、「要支援1の場合は週2回まで」といった利用回数の制限があります。介護予防訪問介護の場合は、要介護状態にならないための予防が目的なので、身体介護ではなく生活援助を重視したサービス内容となっています。

 

たとえば高齢のご夫婦の2人暮らしなどでどちらも訪問介護サービスの対象となった場合でも、同じ日に同じヘルパーさんに介助に来てもらい、ついでにお願いする、といった使い方はできないので注意しましょう。あくまでもその利用者一人一人のためのケアプランに沿って、適切な頻度・内容の訪問介護サービスが提供されるからです。したがって、旦那さんのヘルパーさんに奥さんの介助依頼をすることはできませんし、その逆も然りです。

 

自宅で要介護者の介護をしながらも日中は働きに出ているご家族も多いですよね。そのような場合は、家族が仕事のために外出している日中に必要な介助のみ(昼食調理や洗い物、日中の着替えやトイレの介助など)はサービスの対象となる可能性が高いです。しかしながら、それ以外の(利用者分を含む)家族分の買い物や洗濯などは、訪問介護サービス利用者のみに必要なものではなく、家族全員にとって必要なものなので対象外となるでしょう。このあたりの基準は利用する事業所によっても異なるので、疑問に思ったらまずはケアマネジャーやヘルパーさんに確認してみましょう。

 

訪問介護の費用

1日の訪問介護にかかる費用は、

サービスの種類別料金 × 利用時間 + その他料金(交通費など)+その他加算料金

により決まります。

つまり訪問介護を依頼する時は、「身体介護60分」「生活援助40分」などのように内容と時間を決めて訪問介護に来てもらうことになります。

 

介護保険の自己負担額は基本的に1割負担ですが、一定以上の所得がある方の場合は2~3割負担になることもあります。

ちなみに、要介護度によって料金は分けられてはいません。要介護度が高いほど介護に時間を要する場合も多くなるのが一般的なので、所要時間が増えることにより料金が高くなることが考えられるでしょう。

<サービス費用>

サービス費用の設定 利用者負担(1割)

(1回につき)

身体介護 20分未満 165円
20分以上30分未満 248円
30分以上1時間未満 394円
1時間以上1時間半未満 575円
生活援助 20分以上45分未満 181円
45分以上 223円
通院時の乗車・降車等介助 98円

 

身体介護に加えて生活援助をお願いすることもあるでしょう。身体介護に引き続き生活援助を行う場合には、20分から起算して25分増すごとに66円追加されます(70分以上を限度とします)。

内容 サービス提供時間 自己負担
身体介護に引き続き生活援助を行う場合 20分以上 66円
45分以上 132円
70分以上 198円

 

<交通費>

訪問介護員が居宅に訪問するための交通費のことです。交通費の設定は利用する事業所により異なります。

訪問介護サービスの利用地域内にお住まいの方は無料のことが多いです。それ以外の地域にお住まいの場合、事業所が定めた金額が追加されます。自動車で訪問の場合、1km当たり数十円といった単位になることが多いようです。

 

<基本利用料>

利用者の居宅でサービスを提供するにあたり発生する水道代、ガス代、電気代などの生活費は利用者負担となります。

また、通院・外出介助などあらかじめ想定された移動費用以外で訪問介護員の交通費が発生した場合は、実費相当を利用者側が負担することになるので覚えておきましょう。

 

<その他加算料金>

「加算」とは、手厚いサービスや体制を提供している事業所に対して上乗せされる料金です。事業所によりその加算項目は異なります。必ずかかる料金ではないですが、利用する事業所がどのような加算を取っているか事前に確認するようにしましょう。

 

加算の一例は以下の通りです。

  • 初回加算(200単位/月)

以下の2つの要件を満たした事業所に加算されます。

①新規に訪問介護計画を作成していること

②初回または初回の訪問介護を行った日の属する月に、「サービス提供責任者自らがサービスを提供する」または「サービスを提供する訪問介護員にサービス提供責任者が同行する」場合のいずれか

 

  • 緊急時訪問介護加算(100単位/回)

緊急時の訪問介護サービスにおいて、以下の3つの算定要件を満たした場合に加算されます。

①利用者・その家族等からの要請に基づき、訪問介護員等が居宅サービス計画外の緊急の訪問介護(身体介護に限る)を24時を以内に行っていること

②サービス提供責任者が担当のケアマネジャーと連携を図り、訪問介護を提供する必要があると判断されていること

③要請のあった時間、要請の内容、訪問介護の提供時刻、緊急時訪問介護加算の算定対象である旨等を記録していること

 

  • 特定事業所加算

訪問介護員に対する研修の実施や定期的な会議の開催、事業所に所属する介護福祉士の割合などの各種要件に適合している事業所に加算されます。

 

評価区分はⅠ〜Ⅴまで設けられており、加算される算定率は以下の通りです。

特定事業所加算 Ⅰ:ご利用者の総単位数プラス20%

特定事業所加算 Ⅱ:ご利用者の総単位数プラス10%

特定事業所加算 Ⅲ:ご利用者の総単位数プラス10%

特定事業所加算 Ⅳ:ご利用者の総単位数プラス5%

特定事業所加算 Ⅴ:ご利用者の総単位数プラス3%

 

訪問介護利用時の具体的な費用の例

それでは訪問介護を利用した際の具体的な利用料金を見ていきましょう。

要介護度別に依頼する内容などは変わると思いますので、3パターンを用意してみました。ぜひ参考にしてください。

<パターン①>

要介護度 1
利用者の状態 身体介護は必要ないが、少し足腰が悪く、買い物や掃除洗濯などを1人で行うのが困難。
同居家族 なし(1人暮らし)
訪問介護サービス内容 【生活援助】

・食材の買い出しと調理・皿洗い

・居室やトイレ・浴室の掃除

・洗濯

利用料金(1割負担の場合) ・生活援助:60分(2回/週)

223円×2=446円

計:446円

 

<パターン②>

要介護度 3
利用者の状態 認知症が進行しており、中度の介護を必要とする状態。日中(週3日)は家族が仕事のため1人になってしまう。

車いすは使用しておらず自力で何とか歩けるが、転倒の危険性がある。認知症による物忘れが多く、食事や薬をよく忘れてしまう。

同居家族 娘夫婦・孫と同居
訪問介護サービス内容 【身体介護】

・食事介助・排泄介助・入浴介助

・立ち上がりや片足での立位保持のための介助

・体位変換

【生活援助】

家族不在時の調理・汚れてしまったトイレの清掃・着替えなど

利用料金(1割負担の場合) ・身体介護:45分(3回/週)+生活援助:45分(3回/週)

394円×3=1,182円

132円×3=396円

計:1,578円

 

<パターン③>

要介護度 5
利用者の状態 再重度の介護が必要。

食事の準備や洗濯などは家族が行ってくれるので生活援助は不要だが、日常生活を遂行する能力は著しく低下しているため訪問介護員による身体介護が必要。

同居家族 息子夫婦と同居
訪問介護サービス内容 【身体介護】

・食事介助・排泄介助・入浴介助

・体位変換・着替え介助・ベッドから車いすへの移動時の介助

利用料金(1割負担の場合) ・身体介護:60分(5回/週)

575円×5=2,875円

計:2,875円

 

訪問介護で使える保険

訪問介護は要介護1~5の認定を受けた方、もしくは要支援1・要支援2の認定を受けている方が利用できるサービスです。要支援の方は介護予防訪問介護のサービスが利用できます。したがって介護保険が適用となりますが、利用できるサービスは日常生活を送るうえでの必要最低限のサービスとなります。

また、たびたびお伝えしてきた通り訪問介護は「利用者ができないことを援助する」ことが基本です。家政婦やお手伝いさんではありません。介護保険を適用してサービスを受けるという関係上、なんでもかんでも頼めるわけではないのです。したがって、利用者本人「以外」の家族への支援や、趣味や娯楽に関する依頼など、ホームヘルパーが援助しなくても利用者の日常生活に支障がない行為は対象とならないので、サービスの範囲をきちんと理解したうえで利用しましょう。

※介護保険の対象とならないと判断されたサービス内容は、全額負担で利用していただくことになります。

 

とはいえ、正しく利用すればかかった費用の1割負担で利用できるので、利用者本人はもちろん、そのご家族も安心して訪問介護のサービスを利用することができるでしょう。負担の割合は基本的に1割ですが、所得に応じて2割または3割負担になることもあるので、事前にご自分の負担割合を確認しておきましょう。

 

訪問介護サービスの利用手順

訪問介護の利用を検討している方はとても多いと思います。そこで、以下に一般的な流れを載せるので参考にしてみてください。必ずしもこの限りではありませんが、大まかな流れとしては次のようになります。

  1. 要介護認定の申請
    訪問介護サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。要介護認定申請書に必要項目を記入し、市区町村の担当窓口にて申請しましょう。
    要介護認定の申請には、介護保険被保険者証が必要です。(65歳以上の場合)
    ※40歳から64歳までの方(第2号被保険者)が要介護認定の申請を行う場合は、医療保険証が必要になります。
  2. 要介護認定を受ける
    申請が終わったら要介護認定を受けることになります。市区町村の調査員が自宅を訪問し、介護認定できるかどうかの「認定調査」を行います。
    認定調査の結果を元に「審査判定(一次と二次)」が行われます。一次判定はコンピューターによる判定で、二次判定ではその結果と主治医意見書に基づき要介護度(要支援1または2・要介護1〜5・非該当のいずれか)を判定します。
  3. 介護認定の通知
    介護認定されると介護サービスを利用する本人(被保険者)へ郵送で被保険者証が届きます。(原則申請日から30日以内)被保険者証には、該当する要介護状態区分が記載されているので確認しましょう。
  4. ケアプランの作成
    ケアプランとは介護(介護予防)サービス計画書のことで、どのような介護サービスをいつどれだけ利用するかを取り決める書類です。
    要介護認定の結果が要介護1~5だった場合は「居宅介護支援事業所」に依頼し、ケアマネジャーの選任~ケアプランの作成を依頼します。
    要介護認定の結果が要支援1・2だった場合は「地域包括支援センター」に相談し、介護予防サービス計画書を作成してもらいましょう。
  5. 訪問介護サービス事業者の選定・契約
    ケアプランに基づき、実際にサービスを受ける訪問介護事業所と契約を結びます。
  6. 訪問介護サービス利用開始